「年収の壁」意識、依然として半数超、 就業調整は続く

「年収の壁」問題に関して、今年2025年に大きな制度改正がありました。
これにより、配偶者控除の所得要件が従来の103万円から123万円に引き上げられました。

野村総合研究所は、「年収の壁」に関するアンケート調査結果を発表しました。
本調査は、社会保険料負担の増加などにより手取りが減少する
いわゆる「年収の壁」について、就業行動や意識の変化を把握することを目的としたものです。

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有配偶パート女性の約6割が「年収調整」

調査によると、有配偶パート女性のうち 56.7%
「年収の壁」を意識し、年収を抑えるために就業時間や日数を調整していると回答しました。

これは、制度変更前の2024年8月に実施された調査(61.5%)と比べても大きな変化はなく
制度見直し後も、就業調整行動が根強く残っていることが分かります。

一方、学生のうち67.6%が、「年収の壁」を意識して
就業時間や日数を「調整している」と回答しました。

制度改正の「認知不足」も課題に

税制上の「年収の壁」が引き上げられることについて「知っている」は

  • 有配偶パート女性:51.0%
  • 学生:63.0%

「どこで知ったか」について聞いたところ
学生では「家族・友人」「ソーシャルメディア」と回答する人の比率が
比較的高い傾向がありました。

一方、「勤め先から聞いた」と回答した人は
有配偶パート女性と学生いずれも約1割にとどまることから
今後は事業者経由での周知徹底が必要と考えられます。

一方で、約半数は制度改正を十分に把握していない状況にあり
制度の分かりにくさや情報不足が影響している可能性がうかがえます。

学生と有配偶パート女性で異なる就労意欲

収入増加への意欲については、属性によって大きな差が見られました。

  • 学生
    • 「収入を増やした」:32.0%
    • 「今後増やしたい」も含めると:77.6%
  • 有配偶パート女性
    • 「増やした」:11.8%
    • 「増やしたいと思わない」「分からない」:46.9%

「増やしたいと思わない」と回答した人にその理由を聞いたところ
有配偶パート女性では、「社会保険料の負担を避けたいから」との回答が65.9%に上りました。
学生では「親の扶養に入っておくため」が50%です。

有配偶パート女性では、年収増加に慎重、もしくは判断が難しいと感じている層が多く
家計・社会保険・配偶者の働き方などを含めた複雑な判断が背景にあると考えられます。

企業に求められる対応とは

人手不足が深刻化する中、年収の壁を理由とした就業調整は
企業の労働力確保にも大きな影響を及ぼします。

今後は

  • 社会保険加入のメリット・デメリットの丁寧な説明
  • 短時間正社員や柔軟なシフト設計
  • 制度改正を踏まえた賃金・働き方の見直し

など、「壁を避ける働き方」から「納得して働く働き方」への転換を支援することが重要です。

社労士として、制度の正確な情報提供とともに
企業・従業員双方にとって最適な働き方を一緒に考える支援が、これまで以上に求められています。

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