改正社会保険労務士法が成立――労務監査が正式に社労士業務に

2025年6月18日、「社会保険労務士法の一部を改正する法律」が国会で可決・成立しました。
今回の改正は、社労士制度創設以来9回目となるもので
近年の労働環境の変化や企業ニーズに対応し
社会保険労務士の役割をより明確にする内容となっています。
◆ 改正の主なポイント
- 社会保険労務士の使命を明文化
社会保険労務士は、労働・社会保険に関する専門的知識をもとに
労使双方の信頼関係の構築を支援し、
職場の健全な発展に寄与する専門職であることが、法律上明記されます - 労務監査の業務が明記
企業内での労務管理の適正性をチェックする「労務監査」が
社労士の正式業務として規定されました。
これにより、社労士による労務管理体制の診断・改善提案が
これまで以上に制度的に裏付けられます。 - 裁判所での出頭・陳述に関する規定の整備
社会保険労務士が裁判所に補佐人として出頭し、陳述をする場合に
裁判所にともに出頭することとされている弁護士の地位について
「訴訟代理人」を「代理人」に改めます。 - 名称使用に関する明確化
社会保険労務士、社会保険労務士法人でない者が用いてはならない
社会保険労務士に類似する名称に「社労士」「社労士法人」が含まれます。
中小企業への影響とは?
今回の法改正により、中小企業にとっても“社労士との関わり方”が変化する可能性があります。
- 労務監査のニーズが高まる
働き方改革関連法やパワハラ防止法など、企業が守るべき法令は年々複雑化しています。
今後は、社労士による第三者的な監査を通じて
「自社の労務リスクを事前に洗い出す」ことが求められる時代になるかもしれません。 - 信頼性の高い証明資料として活用
助成金申請や労働局の是正勧告対応などにおいて
社労士による労務監査報告書が、信頼性の高い資料として評価される可能性も高まります。 - 適正な労務管理が「企業価値」に直結
特に昨今は、取引先や金融機関から「コンプライアンス体制」を重視される傾向が強まっており
労務監査の活用が企業の信頼力アップにつながることも期待されます。
◆ 労務監査を活用して、労務リスクの“見える化”を
中小企業にとって、限られた人材や時間のなかで
労務管理を適切に行うのは容易ではありません。
今後は「問題が起きてから対応する」よりも
「予防的な対策」として社労士の活用が重視されていく流れになると考えられます。