長時間労働の是正・新しい働き方への対応が本格議論

厚生労働省の労働基準関係法制研究会は、最新の報告書において
「労働時間法制の抜本的見直し」を最重要テーマの一つとして掲げました。
働き方の多様化・テレワーク・副業兼業・雇用形態の変化により
現行法では十分に対応しきれない課題が増えているためです。
さらに、18日、労働政策審議会労働条件分科会を開催し
労働時間法制に関して、「テレワーク等の柔軟な働き方」「副業・兼業」「管理監督者」「労働時間の開示」
の4つについて具体的課題と検討の論点を提示しました。
記事では、企業が今後特に注視すべき “労働時間法制の具体的課題” を解説します。
1. 連続勤務の上限規制の検討
現行法には、“何日連続で働かせてはいけない”という規制は存在しません。
しかし報告書では、長時間労働の健康リスクを踏まえ、
14日以上の連続勤務禁止などの上限規制を検討すべきとされています。
✔ 想定されるポイント
- シフト勤務・小売・介護・医療などで大きな影響
- 「休日の形骸化」を防止
- 勤務の組み方の抜本的な見直しが必要
2. 勤務間インターバル制度の義務化へ
報告書では、EU基準(11時間)など国際動向も踏まえ、
勤務終了から次の勤務開始まで11時間以上の休息を確保する制度の導入が強く示唆されています。
✔ ポイント
- 現行制度では「努力義務」
- 遅番 → 早番 のシフトを組む現場は要注意
- タクシー・物流・介護・医療で特に制度設計が重要
3. 「つながらない権利」の法的検討
スマホ・チャットツールの普及により
突発的な状況への対応や、顧客からの要求等によって
勤務時間外に対応を余儀なくされる場合もあります。
報告書では
勤務時間外の業務連絡の抑制を義務化する方向性が示されました。
✔ 検討される内容
- 上司・同僚からの業務連絡時間のルール化
- 緊急時の定義の明確化
- 在宅勤務者の「境界なき労働」への対策
4. 労働時間制度の再設計
多様化した働き方に対し、現行制度では使いにくいケースが増えています。
報告書では、以下の制度の見直しが課題として挙げられています。
✔ 主な対象制度
- フレックスタイム制:清算期間の見直し、部分フレックスなど
- 裁量労働制:職務範囲の明確化・本人保護の強化
- 高度プロフェッショナル制度:健康確保措置の見直し
- 変形労働時間制:適用要件の簡素化または厳格化
5. 副業・兼業者の労働時間の扱い
報告書では、副業・兼業について「二つの考え方」を明確に区分しています。
| 目的 | 労働時間の扱い |
|---|---|
| 健康確保 | 通算する(働き過ぎ防止) |
| 割増賃金 | 通算しない(企業が他社分の割増を負担しない) |
✔ 企業が準備すべきこと
- 副業届の提出ルール
- 健康確保のための時間管理
- 上限規制の遵守
6. 特例週44時間制の廃止方向
現在、小売・飲食・理美容など一部業種では
法定労働時間が週44時間となっています。
報告書では、働き方変化を踏まえ
特例の廃止(=週40時間に統一)の可能性が示されています。
これにより、人件費増加が避けられない業界も出てきます。
7. 労働時間の「見える化」
報告書では、企業による
労働時間の情報提供(見える化)を強化すべきと指摘。
想定される内容
- 労働時間の客観的記録(水準向上)
- 企業としての労働時間管理方針の開示
- 健康管理への連動
◆ まとめ
今回の報告書は、「今の働き方に合わせた労働時間法制へ」という方向性を強く示すもので
企業の労務管理に直結する内容が多数含まれています。
労働時間法制は、制度変更が決まると影響が大きく
事前準備が企業の“負担軽減”につながります。
厚生労働省「労働基準関係法制研究会報告書」

