カスハラ指針、求職活動等セクハラ指針― 令和8年10月施行予定 ―

厚生労働省は2025年11月、労働政策審議会において
①カスタマーハラスメント指針
②求職活動等におけるセクシュアルハラスメント指針
の素案を提示しました。

これらは、改正労働施策総合推進法に基づき新たに策定されるもので
令和8年(2026年)10月1日からの施行が予定されています。

企業にとっては、ハラスメント対策の実務が大きくアップデートされる内容であり
今後の社内規程・研修・相談体制の見直しが不可欠になります。
以下、社労士として重要なポイントを解説します。

ぼのぼのと考えよう カスハラってなんのこと?

2025年4月11日、消費者庁より、カスタマーハラスメント防止に向けた啓発冊子『ぼのぼのと考えよう カスハラってなんのこと?』 が公表されました。 この冊子は、消費者と…

1.カスタマーハラスメント指針のポイント

(1)「カスハラ」を2つの視点で整理

指針では、顧客等からの迷惑行為を以下の2類型に区分し
具体的な例を挙げて明確化しています。

①言動の内容が許容範囲を超えるもの

  • 契約内容を著しく超える要求
  • 過度な長時間のクレーム強要
  • 不合理な謝罪・賠償の要求 など

②手段・態様が許容範囲を超えるもの

  • 暴行・脅迫
  • SNS 等での悪評投稿をほのめかす行為
  • 執拗な電話・メール など

「どこからがカスハラか」が企業として判断しやすくなる規定です。

(2)企業に求められる4つの措置義務

① 方針の明確化と周知

  • カスハラ対策方針を明文化
  • 研修による周知
  • 録音・録画での事実確認の明示 など

② 相談窓口の機能強化

  • 発生の恐れがある段階やグレーケースでも相談対応
  • 従来より踏み込んだ相談支援が求められる

③ 事後の迅速・適切な対応

  • 被害社員のケア
  • 顧客との関係調整
  • 職場環境の改善 など

④ 実効性確保のための体制整備

  • 特に 悪質なカスハラへの対処方針を事前に定める
  • 管理監督者を含め労働者に周知
  • 方針に沿って実際に対処できる体制整備

2.求職活動等におけるセクハラ指針(素案)のポイント

(1)対象となる場面の範囲が大幅に拡大

以下のような 求職者が企業と接触する全ての場面が対象となります。

  • 採用面接
  • 説明会
  • OB/OG訪問
  • インターンシップ
  • SNS・オンライン面談 等

また
・同性へのセクハラも含む
・性的指向やジェンダーアイデンティティに関わらず保護対象

と明示されています。

(2)企業に求められる措置義務

基本的には一般のセクハラ対策と同様ですが
求職者特有の視点の追加があります。

① 方針の明確化

採用段階のセクハラについても禁止方針を明確にします。

② 相談窓口の設置

求職者が人事担当者へ相談しにくい点を踏まえ
・人事以外を相談窓口とする
・外部相談機関に委託する

なども推奨。

③ 事後の迅速な対応

事実関係の確認、加害行為の防止措置、求職者へのフォローが必要。

④ プライバシー保護

求職者の情報が外部に漏れない体制整備。

3.企業が今から準備すべきこと

就業規則・服務規程の改定

カスハラ・求職者セクハラの定義、禁止規定、相談体制などを追記。

担当者・現場責任者への研修

特に「グレーゾーンの相談対応」「SNS上の接触」など新領域の教育が必須。

相談窓口の強化

人事以外の相談窓口設置や外部委託の検討。

悪質なカスハラ対処方針の整備

顧客との契約条件、警察への通報基準等を明確化し、社員へ周知。

応募者との接点ごとの対応マニュアル整備

採用説明会・面接・オンライン対応まで一貫した対策が必要。

カスタマーハラスメント・採用段階のセクハラ対策は、企業のイメージ・採用力にも直結する重要テーマです。

施行は令和8年10月ですが、準備には時間を要します。
早期に体制の整備を進めていきましょう。

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