賃上げと人材戦略の再構築がカギに―経済財政白書にみる、今後の人事労務の課題と対応―

日本

2025年7月29日、内閣府より『2025年度 年次経済財政報告』が公表されました。

今年の白書では、「賃上げを起点とした成長型経済の実現」が中心テーマです。
「はじめに」では、名目GDPが初めて600兆円を超えるなど、明るい経済指標が示される一方で
中小企業にとっては人事・労務管理における大きな転換期を迎えていることが強調されています。

◆ 賃上げの流れは今後も続く可能性

第1章「日本経済の動向と課題」では、25年半ばまでのマクロ経済の動向について
景気回復の特徴、関税の影響を詳細にレビューしています。

2025年春闘では、33年ぶりの高い賃上げ率が実現しました。
2024年の賃上げ率は、5.1%、2025年の賃上げ率は、5.25%でした。

賃金と物価の「好循環」が定着しつつあり
昨年に比べ、若年層だけでなく中高年層にも高い賃上げ率が波及しています。

企業だけでなく、中小企業にも賃上げの波は確実に及んでおり
従来の「コスト削減による利益確保」から
「人的資本への投資による成長」へのシフトが求められています。

▶ 中小企業に求められる対応

  • 賃金水準の市場比較と見直し
  • 定期昇給・賞与体系の再設計
  • 「人を育てて活かす」人材育成戦略の再構築

◆ 個人消費の鈍さが示す、従業員の不安

白書第2章では、「賃金は上がっても個人消費が伸びない」ことが
課題として挙げられています。

事実、可処分所得が増加していても
個人消費の回復は緩やかにとどまっていると指摘しています。

転職活動や副業に高い関心

将来不安が根強く、転職活動や副業(スポットワーク)に
目を向ける人も増加傾向にあります。

「スポットワーク」は、隙間時間を有効活用したい労働者と
人材を柔軟に確保したい企業のメリットが合致し増加しています。
運搬、接客、販売といった職種を中心に四半期で600万人以上の求人がありました。

スポットワークにおける労働契約の考え方

2025年7月、厚生労働省は「スポットワークの留意事項リーフレット」を公表し単発・短時間労働(いわゆる“スキマバイト”)に関する法的な留意点を明示しました。 これを受…

▶ 従業員満足を高めるためのヒント

  • 安心して働ける労働条件(待遇・福利厚生)の整備
  • キャリアパスの見える化
  • ワークライフバランスを支える制度(テレワーク、時差出勤など)

◆ 中小企業の人材確保は「企業の魅力」で決まる

今後も続く人手不足の中、給与面の強化だけでなく
「この会社で働きたい」と思われるような組織づくりが必要です。

白書では企業部門の課題として、「人材への投資」「持続的な賃上げ」
「国内外の不確実性への対応力」などが挙げられています。

▶ 今後に向けた労務戦略のポイント

  • 働く人の声を取り入れる社内風土の構築
  • ダイバーシティや女性・高齢者の活躍推進
  • 非正規社員の処遇改善・無期転換の推進

まとめ
賃金の上昇はコストではなく、投資と捉える時代です。
労務管理の見直しは、単なる制度整備ではなく、企業の未来への備えです。
貴社でも、賃上げと働き方のバランスをとりつつ、人材戦略を強化していきませんか?

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