同一労働同一賃金ガイドラインの見直しへ!新たな基準とは?

改定案では、これまでガイドラインに明記されていなかった手当・休暇制度について
新たに判断基準を示すなど、企業の待遇設計に大きく影響する内容が含まれています。

企業が適正な待遇差の運用を行ううえで注目すべき変更点を
社労士の視点で分かりやすくまとめました。


見直しの背景

同一労働同一賃金制度は、正社員と非正規社員との間で「不合理な待遇差」を禁止する制度です。

これまでのガイドラインには、一部の手当・休暇制度について明確な記載がなく
実務では 企業ごとに判断基準のばらつき がありました。

近年、最高裁判例が相次ぎ
退職金・無事故手当・家族手当などの「性質・目的」が明確に整理されたことを踏まえ
ガイドラインをより実務的に分かりやすくするための見直し が行われています。

新たに明確化される7つの待遇項目

今回の見直し案では、以下の項目について 新たに記載が追加 されています。

① 退職手当(退職金)

これまでガイドラインに記載がなく、判断が難しかった項目です。
メトロコマース事件の判例を踏まえ、
以下の通りに記され「支給目的」と「待遇差の合理性」の考え方が明確化されます。

  • 短時間・有期雇用労働者に対し、他の短時間・有期雇用労働者に比べ
    基本給を高く支給している等の事情もない場合、
    相違は不合理と認められるものに当たりうることに留意すべき」と記載されました。

② 無事故手当(安全手当等)

運送業などで一般的な手当。
業務上の安全確保という目的に照らし、正規・非正規での取扱いの差をどう考えるべきかを整理しています。

通常の労働者と業務の内容が同一の短時間・有期雇用労働者には
通常の労働者と同一の無事故手当を支給しなければいけないことが示されています。

③ 家族手当

日本郵便事件最高裁判決において、扶養手当には長期継続勤務の期待の目的があり、
特に「継続勤務が見込まれる非正規労働者」へも支給しなければいけません。

「問題となる例」として
通常の労働者であるXに対しては家族手当を支給しているが
労働契約の更新を繰り返している等

相応に継続的な勤務が見込まれる有期雇用労働者であるYに対しては
家族手当を支給していないケースがあげられています。

④ 住宅手当

最高裁の判決では、正社員には住宅手当を支給している一方で、
“転居を伴う配置転換が予定されていない
契約社員には支給しない”という差は不合理ではないとされました

住宅費補助としての目的から、「転勤の有無」「居住形態」などを踏まえて
待遇差の妥当性を検討する必要があります。

「問題となる例」として
転居を伴う配置の変更が見込まれることを理由として
通常の労働者であるXに対し、住宅手当を支給しており
当該変更が見込まれないことを理由として
有期雇用労働者であるYには住宅手当を支給していないが
A社では実態として通常の労働者に対しても
転居を伴う配置の変更を命じていないケースがあげられています。

⑤ 夏季休暇、⑥ 冬季休暇

日本郵便(大阪)事件最高裁判決において、
時給制契約社員にも妥当するとされたことを受けて、
「短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の夏季冬季休暇を付与しなければならない」と記載されました。

「問題となる例」として
A社においては、繁忙期に限定された短期間の勤務ではない有期雇用労働者であるXに対し
通常の労働者と同一の夏季冬季休暇を付与していないケースを挙げています。

⑦ 賞与(ボーナス)

既存の記載に加え
「不合理な待遇差にあたる場合」の考え方を追加しています。
成果や貢献度の評価軸が明確であることが重要となります。

メトロコマース事件最高裁判決をふまえて、
賞与の目的が短時間・有期雇用労働者にも妥当する場合には、
正社員と同じように賞与を支給する必要があるという考え方が示されました。

「目的が妥当する」とは、たとえば、
・企業への貢献度
・業績への寄与
・日頃の勤務状況を評価する
など、“働きぶりに対する報酬”として賞与を支給している場合があげられます。

名古屋自動車学校事件、給与の均衡待遇に関する最高裁判所の判決は?

2023年7月に正社員と非正規社員の基本給の不合理な待遇格差について初めて最高裁判所の判例がでました。 「定年後に再雇用された際に給料が大幅に減額されたのは不当」だ…

⑧ 病気休暇

病気休暇や休職制度の取り扱いについても
付与条件の差が不合理となる場合の基準が追記されます。

日本郵便事件最高裁判決を踏まえて
「通常の労働者に病気休職期間に係る給与の保障を行う場合には、
労働契約の更新を繰り返している等、
相応に継続的な勤務が見込まれる
短時間・有期雇用労働者にも、
通常の労働者と同一の給与の保障を行わなければならない」との記載が追加されました。

改定案で示された基本的な考え方

1.「待遇の性質・目的」に基づく説明が必須

「正社員だから」「将来役割が違うから」といった抽象的な理由だけでは説明になりません。
各手当・制度の目的を踏まえ
なぜ待遇差を設けているのか、企業は客観的かつ具体的に説明できる必要があります。

2. 不合理な差の是正は「非正規労働者の待遇改善」で対応すべき

ガイドラインの目的から
正社員の待遇を引き下げる(ベースダウン)対応は望ましくないと明記される方向です。

3. 労使の話し合いと制度の明文化が重要

住宅手当や家族手当といった制度については
実態を踏まえて「誰に・どのような条件で支給するか」を明文化することが求められます。

4. 実態に即した柔軟な制度運用

継続勤務が見込まれるパート・有期労働者については
正社員との待遇差をつける合理性が弱いため、今後の制度見直しが必要となる企業もあります。

企業が今すぐ取り組むべきこと

✔ 手当・休暇制度の目的を整理

住宅手当・家族手当・無事故手当など、制度目的をまず明らかにしましょう。

✔ 正社員と非正規社員の待遇差の理由を確認

・転勤の有無
・配置変更の可能性
・職務内容の違い
など客観的基準で説明できるかを点検します。

✔ 就業規則・賃金規程の見直し

今回の見直し案を踏まえ、規程類の整備が必要となる可能性があります。


社労士のサポート

労務サポートでは、次のような支援を行っています。

  • 手当・休暇制度の目的整理と待遇差の妥当性チェック
  • 非正規社員を含む賃金制度・評価制度の整備
  • 就業規則・賃金規程の改定


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