スポットワークにおける労働契約の考え方

2025年7月、厚生労働省は「スポットワークの留意事項リーフレット」を公表し
単発・短時間労働(いわゆる“スキマバイト”)に関する法的な留意点を明示しました。

これを受け、スキマバイト大手の株式会社タイミーは
2025年9月1日からのサービス運営方針の見直しを発表しました。

■ 労働契約の成立時期が「応募完了時点」に変更

これまで一部のスポットワーク事業者では
労働契約の成立を「業務当日のチェックイン時点(QRコード読み取り)」とする運用がなされていました。

しかし、リーフレットでは「面接等を経ず、先着順で就労が決定する求人の場合
別途特段の合意がなければ応募完了時点で労働契約が成立する」と示されました。

これを踏まえ、タイミーでは、今後は応募完了の段階で
「解約権留保付労働契約」が成立するとの運用に変更し
働き手の法的保護を強化します。

■ 解約(キャンセル)は原則不可に、休業手当の支払いが必要

さらに、契約成立後の事業主側からの一方的なキャンセル(マッチング解消)は原則不可とされ
正当な理由がない限り、労働基準法第26条に基づく休業手当の支払いが必要になります。

たとえば、業務当日になって「今日は仕事がない」といった理由で就労機会を取り消した場合
事業主の都合によるものであれば、所定賃金の60%以上の休業手当を支払う義務が生じます。

例外として、解約可能事由(解約権を行使できる事由)に該当する場合に限り
休業手当の支払いが不要となります。

例えば、地震や台風などの天災事変等の不可抗力その他の事由が生じた場合や
労働者が就労に必要な資格を有していないなど募集基準・条件を満たさない場合については
解約可能事由に該当し、休業手当の支払い対象外となります。

■ 労働時間・賃金の修正にも柔軟な対応を

加えて、リーフレットでは労働者から
「予定していた労働時間と実際の労働時間が異なる」旨の申告があった場合
事業主は速やかに労働時間を確認し、賃金を確定・支払う義務があることも明示されました。
予定どおりに働いた場合の賃金は遅滞なく支払うことが求められます


【社労士の視点】スポットワークも“労働契約”であることを再認識しましょう

スポットワークであっても、応募時点で労働契約が成立しているという認識が求められ
通常の雇用と同様に労基法が適用されます。

休業手当の支払い義務や労働時間の適正把握は、事業者側の法令遵守として重要なポイントです。

今後、スポットワークを活用される企業においては、次の点にご注意ください

  • 求人に応募があった時点で契約成立の可能性がある
  • 一方的なマッチングキャンセルはできず、休業手当が必要なケースも
  • 実労働時間と予定時間が異なる場合の柔軟な対応が求められる

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