シニア社員を活用する「ジョブ型」人事とは?

はじめに

多くの企業で、定年を迎えた社員の再雇用が一般的になっています。
しかし、その活用方法や処遇制度が「なんとなく」になっていないでしょうか?

今回の記事では、シニア社員の特性を踏まえた“ふさわしい人事制度”とは何かを考えます。
福祉的雇用を超えた、戦略的な人材活用のヒントをお伝えします。


1. シニア社員の基本特性とは?

現在、多くの企業では定年を60歳とし、再雇用で65歳まで働ける制度が主流です。
このように、定年後の雇用はあくまで「一時的・短期間」となるケースが多く
シニア社員は、知識・経験を今すぐ使う即戦力人材と捉えることが必要です。

そのため、以下のような整理が重要です。

  • 60歳未満の社員 → 長期雇用型人材
  • 60歳以降のシニア社員 → 短期雇用型人材

このように、企業には「長期型」と「短期型」の2種類の人材を前提とした
ハイブリッドな人事制度設計が求められる時代に入ってきています。


2. 現状の人事管理は“福祉的雇用型”が主流

一方で、現実の企業の人事管理はどうなっているのでしょうか?
多くの企業では、再雇用後のシニア社員に対して

  • 賃金を一律で引き下げる
  • その後の昇給はない
  • 評価制度が整備されていない

といった対応が一般的です。

これは、シニア社員に対して
「成果を期待していない」「役割に期待していない」
というメッセージを暗に送ってしまっているとも言えます。
こうした制度は「福祉的雇用型」と呼ばれます。

「年金支給開始までの5年間は、再雇用しなくてはいけない」という
企業の義務感によって雇用を継続しているだけで
本人のやる気やパフォーマンスは上がりにくい状態です。

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3. ふさわしい人事とは?“需要サイド型”דジョブ型”へ

では、どうすればシニア社員を戦力として活かせるのでしょうか?
重要なのは、発想の転換です。

✖ 「シニア社員がいるから、できる仕事を用意する」

供給サイド型(福祉的雇用型)

◯ 「この業務にはこういう人材が必要だ。だから、その条件に合うシニア社員を活用する」

シニア社員の人事

需要サイド型(戦略的ジョブ型)

これが、適所適材型の配置です。

さらに、短期雇用であるシニア社員には、「年齢」ではなく
「業務の重要度」に応じた“仕事基準の賃金制度”が合理的です。
このような人事制度は、まさに ジョブ型の一形態 と言えるでしょう。


4. キャリアビジョンも“上り続ける”から“再構成”へ

そして忘れてはならないのが、シニア社員自身のキャリア設計です。

多くの人が、若い頃から「より高い役職」「難しい仕事」を目指す
「上向指向型」のキャリアを歩んできました。
しかし、65歳・70歳・75歳まで、同じように「上り続ける」のは難しいのが現実です。

今後は、次のようなキャリアビジョンへの転換が必要です。

  • 水平指向型:同じレベルの仕事で経験を活かす
  • 降りる指向型:支援・補佐役としてチームに貢献する

このためには、「自分は将来どのような役割を果たしたいのか?」を見据えた上で
意識・行動・能力の再構成を図ることが重要です。

できれば、定年の10年前(50代)には取り組み始めることが望ましいでしょう。


おわりに“まだまだ活躍できる人材”としてのシニア社員へ

高年齢者雇用が当たり前になるこれからの時代。
企業側には、福祉的な延命雇用ではなく、役割のある雇用=ジョブ型人事の導入が求められます。

そして、シニア社員自身も、50代くらいから
「これからどのように働くか」というキャリアの再設計が必要です。

企業と個人、両者が戦略的に動くことで
“まだまだ活躍できる人材”としてのシニア社員の可能性は大きく広がるでしょう。

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