【2025年最新】年金制度の最新動向と企業が備えるべき5つの視点
2025年5月16日、年金制度改正法案が国会に提出されました。
年金制度の大幅な見直しは、単なる制度改正にとどまらず
企業の労務管理や人件費戦略に直結するインパクトを持っています。
特に経営者・人事担当者にとっては、「見逃せない5つのポイント」があります。
本記事では、それぞれのトレンドと企業が取るべきアクションについて解説します。
1. 短時間労働者の社会保険加入義務
パート・アルバイトも原則加入へ

これまで「従業員数51人以上」などの企業規模要件があった
短時間労働者への社会保険適用ですが
以下の2つの条件が徐々に撤廃されます。
①賃金が月額8.8万円以上(3年以内に廃止)
②51人以上の企業(10年かけて対象の企業を拡大)
つまり、「週の勤務が20時間以上」と「学生でないこと」が加入条件となります。
企業の対応ポイントとして、以下の3つが考えられます。
- 就業規則の整備
- 保険加入にかかる手続き体制の強化
- パート・アルバイトの雇用コスト見直し
2. 個人事業所の適用拡大

これまで適用除外となっていた中小企業にとって
**社会保険適用の“待ったなし”**の時代が到来します。
「従業員5人以上の農業、林業、宿泊業、飲食サービスなどの個人事業所」にまで及ぶため
これまで社会保険を敬遠していた業種や規模の企業も見直しを迫られます。
中小企業への影響として、以下の3つが考えられます。
- 事業主負担の増加
- 雇用戦略の再検討(パートから正社員への転換含む)
- 業務委託や外注化の検討
3.在職老齢年金の支給停止基準の引き上げ

これまで、65歳以降の厚生年金受給者が一定の収入を得ていると年金の支給が停止ますが
その基準額が50万円→62万円へ引き上げられます。
これは、シニア人材の活用を促す施策のひとつです。
経営戦略への応用案は以下の通りです。
- 65歳以上の高スキル社員の継続雇用がしやすくなる
- 賃金設計の柔軟化とモチベーション向上
- シニア世代向けの人事制度見直し
4. 厚生年金の標準報酬月額が引き上げ

標準報酬月額の上限を、65万円から75万円に3年間かけて段階的に引上げられます。
なお、月65万円以下の方の保険料は変化しません。
5. 人件費の中長期的上昇リスク
今回の改正だけでなく
「最低賃金の上昇」「労働力不足」「同一労働同一賃金」などの外部要因も重なり
今後、数年で企業の人件費は確実に増加傾向にあります。
特に中小企業では、生産性向上や業務効率化の対策が急務です。
▶ リスク管理と対策:
- 人材投資の優先順位を明確に
- DXによる業務効率化の導入
- 業績連動型の報酬制度など、柔軟な賃金設計
まとめ:制度改正は“コスト”ではなく“チャンス”と捉える
今回の年金制度改正は、企業にとって一見「負担増」と見える側面が強調されがちですが
一方で優秀な人材の確保・定着や、高齢人材の活用、福利厚生の強化など
長期的な経営力強化につながる「機会」としても捉えられます。
企業経営者や人事担当者は
これを機に、自社の人材戦略と制度対応の整備を進めることが求められます。
参考ページ「年金制度改正法案を国会に提出しました」