ストレスチェック制度~50人未満の事業場も義務化へ~

近年、10代・20代の若い世代を中心に、「心の病」を抱える労働者が増加しており
従業員のメンタルヘルス対策は、企業規模を問わず重要な経営課題となっています。

特に小規模事業場では、一人ひとりの役割が大きいため
メンタルヘルス不調による休業は、業務への影響や人材不足を一気に深刻化させるリスクがあります。

本記事では、労働者数50人未満の事業場におけるストレスチェック制度について
制度改正の動きと実務上のポイントを解説します。

ストレスチェック制度とは

ストレスチェック制度は、労働安全衛生法に基づき
労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的とした制度です。

事業者がストレスチェックを実施することで

  • 労働者自身がストレス状態に気付き、セルフケアを促す
  • 高ストレス者に対し、医師による面接指導の機会を提供
  • 集団分析により、職場のストレス要因を把握し、職場環境の改善につなげる

といった取り組みを行います。

単なる「検査の実施」が目的ではなく
職場環境の改善まで含めて取り組むことが制度の本来の趣旨です。

50人未満事業場も、3年以内に義務化へ

現在、ストレスチェックの実施が義務づけられているのは
労働者数50人以上の事業場です。

しかし、令和7年の労働安全衛生法改正により
これまで努力義務とされてきた50人未満の事業場についても
3年以内に義務化されることが決まっています。

今後は、事業場の規模にかかわらず
ストレスチェックへの対応が必要となる見込みです。

ストレスチェック義務化!活用のポイント

労働安全衛生法により、従業員50人以上の事業場では「ストレスチェック」が義務化されています。 さらに、2027年までに従業員50人未満の事業場に対してもストレスチェック…


小規模事業場向けマニュアル案と実施体制

このマニュアル案では

  • 労働者のプライバシー保護の観点から、外部機関への委託を推奨
  • ただし、外部委託であっても
    実務担当者の選任など、事業者が実施体制を整備する責任は残る

とされています。

外部に任せればよい、というわけではなく
制度の主体は、あくまで事業者である点に注意が必要です。

集団分析は「個人が特定されないこと」が前提

職場環境改善のために行う集団分析についても
労働者のプライバシー保護が最優先となります。

特に小規模事業場では

  • 個人が特定されない方法で実施すること
  • ストレスチェック対象者が10人未満の場合は、原則として集団分析を行わない

といった点に注意が必要です。

人数が少ない事業場ほど、慎重な対応が求められます。

高ストレス者への医師の面接指導について

50人未満の事業場には、産業医の選任義務がありません
そのため、高ストレス者への面接指導が難しいと感じる経営者の方も多いかもしれません。

しかし
登録産業医が配置されている「地域産業保健センター」を活用することで
無料で医師の面接指導を受けることが可能です。

小規模事業場にとっては、積極的に活用したい公的支援制度といえるでしょう。

労働基準監督署への報告義務と「50人」の数え方に注意

ストレスチェックの実施結果について

  • 50人以上の事業場:労働基準監督署への報告義務あり
  • 50人未満の事業場:報告不要

とされています。

ただし注意点として
ストレスチェックの対象者の基準は「雇用契約期間1年以上」などですが
報告義務の有無を判断する「常時使用している労働者」の基準とは異なります

50人のカウント方法を誤ると、対応を間違えてしまう可能性があるため
判断に迷う場合は専門家への確認が重要です。

メンタルヘルス対策は「経営課題」

メンタルヘルス不調により休業した場合
平均で約3か月の休業期間が必要となり
さらに復職後に再度休業する割合も約半数とされています。

小規模事業場にとって、これは
人材の損失であると同時に、経営上の大きなリスクです。

ストレスチェック制度をはじめとしたメンタルヘルス対策に取り組むことで

  • 働きやすい職場づくり
  • 生産性の向上
  • 人材の確保・定着
  • 企業価値の向上

につながります。

特に人材不足が課題となっている小規模事業場ほど
その効果は大きいといえるでしょう。

まとめ

ストレスチェック制度は
単なる義務対応ではなく、経営を守るための重要な仕組みです。

事業者は、メンタルヘルス対策を経営課題として位置付け
今後の義務化を見据え、早めに準備を進めていくことが重要です。

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