職場のハラスメント裁判例について
厚生労働省が運営するハラスメント対策ポータルサイト「あかるい職場応援団」にて
「裁判例を見てみよう」に新たな裁判例が1件追加されました(令和7年7月17日公表)。
パワハラの6つの類型
このコンテンツでは、実際に裁判で争われたハラスメント事案が掲載されており
とくにパワーハラスメントに関しては
- 「身体的な攻撃」
- 「精神的な攻撃」
- 「人間関係からの切り離し」
- 「過大な要求」
- 「過小な要求」
- 「個の侵害」
といった6つの類型に分類して紹介されています。
また
- 企業側の責任が問われたケース
- パワハラとは認められなかったケース
- セクシャルハラスメント関連の事例
など、全部で19の切り口から検索・閲覧が可能です。
企業として、従業員に対する指導や対応が
どのような場合に「ハラスメント」と判断されるか
また、どのような行為が企業の法的責任に発展するのかを把握することは
未然防止やリスク管理のうえで非常に重要です。
社内研修や規程の見直しの参考にもなりますので、ぜひこの機会に最新の裁判例をご確認ください。
👉 詳しくはこちら(あかるい職場応援団):
「裁判例を見てみよう」に、事例が1件加わりました(令和7年7月17日)
✳️ 裁判例概要

以下は、実際の裁判の概要です。
事案名:広島中央保険生協(C生協病院)事件
最高裁判決日:平成26年(2014年)10月23日(第一小法廷)
争点:妊娠中に軽易業務への転換を受けた際に副主任から降格された措置が
「均等法9条3項」(妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止)に違反するか
🔍 事案の経緯
- 被用者X(副主任・理学療法士)は第2子妊娠を機に
身体的負担を軽減するために軽易業務への転換を請求。 - 会社(Y組合)はこれを認め、Xを訪問リハビリから病院内リハビリへ異動。
同時に副主任の職級を免じる措置(降格)を実施。 - Xは産前産後・育児休業後に復帰したが、副主任職には戻らず、手当も停止された。
- Xは降格・手当減額が「均等法9条3項」に反するとして訴訟を提起。
🏛 判旨のポイント
- 均等法9条3項は強行規定:妊娠・出産・軽易業務への転換を理由とする解雇、
降格や手当カットなど不利益取扱いは原則違法で無効 - 例外的に合法となる例:
①労働者が自由な意思で合理的に同意した場合
②業務運営上どうしても降格が必要とされる特段の事情がある場合 - 本件の判断:Xの降格措置は
- 同意は形式的・不十分で、自由な意思による合理的同意とは認められない
- 降格措置に正当な業務必要性があるとは認められなかった
→ 上記①及び②について十分に審理検討せずに
措置が均等法9条3項の禁止する取扱いには当たらないと判断した原判決を
破棄し、原審に差戻した。
この判例は、妊娠・軽易業務への配慮の名目での降格が
実質的に不利益取扱いと評価されやすいことを示しており
社労士としても企業側の規程整備・対応方針において非常に参考になるものです。