シニア雇用は企業にメリットあり? 意識変化を促すスポットワークの力

近年、働き手の高齢化や多様化が進む中
シニア世代(60歳以上)の就労機会の確保と柔軟な働き方の提供は
社会的に極めて重要な課題となっています。
こうした背景から、スキマバイトサービス「タイミー」を提供する
株式会社タイミーが実施した「シニア世代のスポットワーク利用実態調査(2025年版)」は
この問題に対する貴重な解決策を示してくれるでしょう。
この調査は、60歳以上の働き手1,080名と
シニアとマッチングした経験を持つ57事業所へのアンケート
さらにプラットフォームの利用データを基に
シニアの「働き方」や「事業者側の受け止め方」を詳細に分析しており
その主要なポイントを以下に整理します。
調査の目的と背景
スポットワーク(単発・短時間のアルバイト)の需要は
年齢や性別を問わず拡大しており、特にシニア層の利用増加が顕著です。
タイミーの強みである「履歴書・面接なし」という手軽さは
シニアが抱える「働きたくても働けない」という
長年の課題を解決する可能性を秘めていると注目されています。
主な調査結果の解説
1. 利用者数と属性
- 登録者数: 2025年4月時点で、タイミーに登録している
60歳以上のシニアワーカーは約30.8万人で前年同月比で約1.9倍に増加。
65歳以上に限ると約11万人で
こちらは約2.0倍と、高齢層ほど利用が急増していることがわかります - 最高齢ワーカー: 最高齢は90歳で、年齢に関係なく働ける環境があることを示しています。
- 高評価: シニアワーカーの評価(Good率)は平均97.7%と非常に高く
ワーカー全体の平均98.9%と比較しても遜色ありません。
この高い評価は、シニアワーカーが真面目で責任感がある
あるいは企業側の期待値とのマッチングが良好であることを示唆しています。 - スキルと実績: スキルを可視化する「バッジ」の取得状況では
「洗い場」(60.4%)、「仕分け」(56.5%)、「ホール」(48.3%)が上位を占め
肉体的な負担が比較的少ない、または指示が明確な業務が選ばれている傾向が見られます。
これは、体力や健康状態を考慮した働き方を求めているシニアのニーズを反映していると考えられます。
2. シニアワーカーの就労状況と動機
- 就労の課題: タイミー利用前に「希望する仕事に就けなかった」(26.4%)
「全く仕事が見つからなかった」(21.8%)と回答した人が合わせて約半数に上ります。
これは、履歴書や面接といった形式的な採用プロセスが
高齢者にとって大きなハードルとなっていたことを明確に示しています。 - スポットワークを選ぶ理由:
- 自宅から通いやすい場所で働けるから(43.6%)
- 空き時間を有効活用するため(39.7%)
- 柔軟な働き方ができるから(39.6%)
- 健康維持のために適度に体を動かしたい(19.7%)
- 職種: 「軽作業(倉庫内作業)」(61.3%)、「飲食」(35.9%)が上位を占めています。
これらの職種は、未経験でも始めやすく、短時間で完結する業務が多いため
シニア層にとって参入しやすい分野と考えられます。
3. 働くことによる心理的・ポジティブな影響
- 精神的効果:
「気分転換になった」(61.3%)、「人の役に立てることに喜びを感じた」(30.1%)、
「自信が得られた」(24.4%)という回答が多数を占めています。
これは、働くことが単なる収入源ではなく
自己肯定感の向上や社会との接点を持つための重要な手段であることを示しています。 - フリーアンサーの声:
「新しいことに挑戦できた」「交流が広がった」
「年齢を超えて労働の機会を得られる嬉しさを感じた」といった声は
仕事を通じて人生の新たな可能性を見出しているシニアが多いことを物語っています。
事業者側の状況と意識
タイミーでのシニアワーカーとのマッチング経験がある事業者のうち
43.9%が「以前はシニア採用に積極的ではなかった」と回答しています。
しかし、マッチングしたシニアを長期採用したいと考える事業者は29.8%に上ります。
これは、シニアの能力や意欲を直接体験することで
企業側の意識が変化していることを示唆しており
単発の仕事が長期的な雇用関係へと発展する可能性を示しています。
社労士としての考え
名古屋の高齢者就労の促進と支援を考える上で、以下の点が特に重要です。
1. 雇用制度のハードル低減
履歴書や面接といった画一的な採用プロセスが
働く意欲のあるシニアの機会を奪っていることが明らかになりました。
このことから、「高齢者の雇用における採用プロセスの簡便化」や
「年齢を問わないスキル・経験ベースの選考基準の導入」を促す必要があります。
2. 働き方の柔軟性の確保
通勤のしやすさ、時間の自由度、作業内容の調整可能性は
シニアにとって働く上での重要項目です。
スポットワークや単発の仕事だけでなく、
短時間勤務やシフトの自由度が高い仕事を増やすことが
多様なニーズに応える鍵となります。
3. 継続雇用と長期就業の可能性の拡大
短期的なスポットワークを通じて築かれた信頼関係を
長期雇用へとつなぐモデルを増やすことが重要です。
企業側には、シニアを「一時的な労働力」ではなく
「持続可能な戦力」として評価する意識改革を促す必要があります。
4. 職種・スキルマッチングの多様化
軽作業や飲食といった職種以外にも
シニアが持つ豊富な経験や「ソフトスキル」を活かせる仕事を見出すことが重要です。
例えば、接客、指導、相談業務、地域活動への参画など
専門知識や人生経験が活かせる業務の創出が考えられます。
結び
今回の調査は、シニア世代がスポットワークを通じて
「働きたくても働けなかった」という状況から柔軟な就労機会を得ていること
そして事業者側の意識にも変化が生まれていることを明確に示しています。
こうしたポジティブな動きをさらに後押しするため、企業文化の改善が求められます。
この調査結果が、より良い高齢者雇用社会を築くための第一歩となることを期待します。
参考ページ「タイミー、シニア世代のスポットワーク利用実態調査」
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