年金制度改正法が成立(2025年6月)

2025年6月12日、年金制度の改正法案が国会で成立しました。
今回の改正は、少子高齢化や多様な働き方に対応するため
年金制度を見直す大きな一歩です。
中小企業の皆さまにとっても、今後の人事・労務管理に影響する重要な内容が含まれています。
厚生労働省の発表による主なポイントは以下の通りです。
主な改正内容と影響
① 社会保険の加入対象の拡大
これまでよりも小規模な企業で働くパートタイムの方も、厚生年金・健康保険に加入できるようになります。
⇒ 企業規模要件(51人以上の企業が適用対象)の撤廃
(順次施行:令和9年10月~令和17年10月)
⇒ 賃金要件(賃金が月額8.8万円(年収106万円相当)以上)の撤廃
(公布から3年以内に施行予定)
→中小企業の人件費や手続き負担に影響が出る可能性があり、早めの準備が必要です。
② 在職老齢年金の見直し(令和8年4月施行)
在職老齢年金制度の支給停止基準を、50万円→62万円に引上げ
高齢の従業員が働きながら年金を受け取りやすくなります
→人手不足の中、シニア人材の活用がしやすくなります。
③ 遺族年金の見直し(令和10年4月施行)
以下の通り、男女で異なっていた支給条件が見直され、男女差が解消されます。
○男女ともに受給しやすくし、原則5年の有期給付に
○低所得など配慮が必要な方は最長65歳まで所得に応じた給付の継続
○有期給付の場合の加算や配偶者の加入記録による自身の年金の増額
○女性のみの加算を廃止(25年かけて段階的に縮小)
④ 標準報酬月額の上限引き上げ(令和9年9月以降順次施行)
標準報酬月額の上限を、65万円から75万円に3年間かけて段階的に引上げ
保険料や年金額の計算に使う「賃金の上限」が段階的に引き上げられます
⑤ 私的年金制度(iDeCoなど)の拡充
① 個人型確定拠出年金の加入可能年齢の上限を70歳未満に引き上げる。
② 企業年金の運用の見える化(情報開示)として厚生労働省が情報を集約し公表することとする。
この加入可能な年齢上限の引き上げにより、より長く備えることができるようになります。
⑥ 将来の基礎年金の給付水準の底上げ(公布日から施行)
将来的に年金の給付水準が下がることを防ぐための仕組みが整えられます。
① 年金制度の所得再分配機能の低下により
基礎年金の給付水準の低下が見込まれる場合には
基礎年金と厚生年金のマクロ経済スライドによる調整を同時に終了させるために
必要な措置をおこないます。
②基礎年金の額及び厚生年金の額の合計額が
措置をおこなわなかった場合に支給される基礎年金及び厚生年金の合計額を下回るときは
その影響を緩和するため必要な措置をおこないます。
中小企業が今からできること
- パートタイマーの社会保険加入に備えた就業規則・賃金体制の見直し
- シニア人材の活用を視野に入れた職場環境の整備
- 法改正に対応した社内制度や手続きの準備
🌟労務サポートからのアドバイス
必要に応じて、貴社の実情に合わせたアドバイス・支援も行っています。
段階的に施行されるため、「うちはまだ先」と油断せず、早めの準備が後の負担を減らします。
加入対象となる従業員が離職するリスクもあるため、事前の説明・信頼関係の構築が大切です。